研究 / Research


愛知淑徳大学

現代社会学部 卒業論文

『幸福祉社会・デンマーク~生きる歓びと社会構造との関わりを考察して~』

 

 

 

 

デンマークという国に興味を持ったきっかけ。それはとあるテレビ番組を見たことからだった。 そこでは、自身の生活と社会に満足している人々の様子が、映し出されていた。

デンマークは先進国共通の問題である「少子化」を乗り越えたことに成功したが、その要因には、男性も女性も「家事・育児」と「仕事」を両立させられること、柔軟な働き方が出来ること、保育施設が充実していること、教育費・医療費はほぼ無料であること、などが挙げられていた。

しかし一番の背景には、一人ひとりが自分らしい人生を送れるように、社会がその多様性を尊重し、後押ししていることがあるのでは、と思った。

 

「日本では”理想だけど、無理だ”と思って諦めていることが、当たり前になされている国がある」

そんなデンマークに魅了され、今に至っている。

 

当論文を通して、「幸福祉社会」とは、「安心して暮らせる社会」と「多様な生き方が出来る社会」であると考えた。

 

安心は全員に、選択は一人ひとりに。

 

「未来は選びとるもの」(ヨアン・ノルゴー氏)であるならば、これからデザインしていくのは私たちで、そのひとつのモデルを、デンマークは提示しているように思う。

 

東海大学大学院

国際地域学研究科

国際地域学専攻 修士論文

『エコビレッジの研究

~「幸福祉国家」への4つの鍵~』

 

 

 

<要約> 

現在日本に山積する問題の中でも、デンマークとの比較などから、

「安心感の薄れた社会」であり、

「多様性の欠如した社会」であることの2点が、重要だと考えている。

これらの問題を解決し、

国民が幸せを感じられる「幸福祉社会」を構築するにあたり、

「共育」「共生」「協働」「環境」

の4つの”K”が鍵になる、との仮説を設定した。

この「4K」を包括している場が「エコビレッジ」であると考え、研究を始めた。

 

本論文では、デンマークのエコビレッジをケースとして取り上げ、

「幸福祉社会」への貢献要因を検証する。

3カ月にわたりデンマークにて行った、約130名の住民に対するインタビュー調査を元に、エコビレッジでは、「安心感を提供しているのか」「多様性を創出しているのか」「4K(「共育」「共生」「協働」「環境」)を包括しているのか」の3点について、分析をする。

 

結論として、エコビレッジは「4K」へのさまざまな実践を行っており、

また「安心感の提供」と「多様性の創出」がなされていた。

しかし「幸福祉社会」へと貢献している要因は、4Kのみとは限らず、

今後検討していく必要がある。

 

人の持つ「多様性」を尊重し、信頼で生み出される「安心感」。

エコビレッジは「幸福祉社会」に導くひとつのモデルである、との確信に至った。

<目次>

1.はじめに

1.1 「豊かさ」の再考

1.2 幸福度ナンバー1の国、デンマークとの出会い

 

2.日本社会の2つの問題

2.1 安心感の薄れた社会

2.1.1 他人を信頼出来ない

2.1.2 人間関係の希薄化

 

2.2 多様性の欠如した社会

2.2.1 「幸福」の決定要因

2.2.2 ワーク・ライフ・アンバランス

2.2.3 多様性に非寛容

 

3.エコビレッジ

3.1 エコビレッジとは

3.2 第一人者が語るエコビレッジ

 

4.デンマークにおけるエコビレッジ

4.1 背景と現状

 

4.2 事例紹介

4.2.1 Christiania

4.2.1.1 概要

4.2.1.2 歴史

4.2.1.3 Christianiaでの暮らし

4.2.1.4 すべての人々に開かれるChristiania

4.2.1.5 自治

 (1)リーダー不在のミーティング

 (2)社会への貢献

4.2.1.6 エコロジカルな取り組み

 (1)先見的な取り組み

 (2)若者の新しい取り組み:「Butcher Dinner」

 (3)「エコビレッジ」か否か

4.2.1.7 外から見たChristiania

 (1)都市と地方における差

 (2)閉鎖的な一面

 

4.2.2 Svanholm

4.2.2.1 概要

4.2.2.2 「共有」する生活

 (1)収入の共有

 (2)週6回のコモンミール

4.2.2.3 食糧とエネルギーの自給自足

 (1)食糧事情

 (2)エネルギー事情

4.2.2.4 自治

 (1)「リーダーはいない」

 (2)全員一致まで議論

 (3)さまざまなグループ

4.2.2.5 かかわり

 

4.3 それぞれのビジョン

 

5.分析

5.1 安心感について

5.1.1 インタビューの回答から

5.1.2 雇用の創出

5.1.3 他者への配慮

5.1.4 信頼感の醸成

5.1.5 滞在中に感じた安心感

 

5.2 多様性について

5.2.1 「認識」と「尊重」

5.2.2 多様な働き方

5.2.3 可能性の創出

 

5.3 4K(共育、共生、協働、環境)

5.3.1 「共育」

5.3.1.1 日本の現状

5.3.1.2 「学び」の場

5.3.1.3 共に育てる「共育」

5.3.1.4 エコビレッジで育つとは

 

5.3.2 「共生」

5.3.2.1 日本の現状

5.3.2.2 「Each other」(お互いに)

5.3.2.3 折り合い

5.3.2.4 外とのかかわり

 

5.3.3 「協働」

5.3.3.1 日本の現状

5.3.3.2 「学」「官」との連携

5.3.3.3 取り組みの紹介

5.3.3.4 協力して働く

 

5.3.4 「環境」

5.3.4.1 日本の現状

5.3.4.2 意識の向上

5.3.4.3 「合理性」と「快適さ」

5.3.4.4 環境に配慮した行動(個人編)

5.3.4.5 環境に配慮した取り組み(ビレッジ編)

 

6.日本におけるエコビレッジ

6.1 現状と傾向

 

6.2 「第三回エコビレッジ国際会議」

6.2.1 概要

6.2.2 参加者が描く「理想のエコビレッジ」

 

6.3 「木の花ファミリー」

6.3.1 日本エコビレッジの”プラットフォーム”

6.3.2 木の花ファミリーで暮らす人々

6.3.3 「大人ミーティング」

6.3.4 これからの夢

 

6.4 東海大学生に対するアンケート調査

 

7.結論